こんにちは!ITの力で建設業界に貢献する「アークシステム」です。
建築物の建築において、構造の安全性と品質を確保するために欠かせない図面が、「配筋図」です。
配筋図は、建物の骨組みとなる鉄筋の配置や仕様を詳細に示した重要な設計図面で、施工現場での正確な作業を支える基盤となります。
今回は、配筋図の基本的な概念から、配筋の種類、作成方法まで体系的に解説します。
建設業界で働く方や、これから建設業界を目指す方にとって必要な知識を、わかりやすくお伝えしていきます。
目次
配筋図とは?
配筋図は、鉄筋コンクリート造の各部材において、鉄筋をどこに、どのように配置するかを明示する専門図面です。
この図面には、柱・梁・スラブ・壁・基礎といった構造部分に使用される鉄筋の配置場所、サイズ、使用本数、種類などの詳しい情報が含まれています。
そもそも「配筋」とは何か
そもそも配筋とは、建築構造物の骨組みを形成する鉄筋をコンクリート内部に適切に配置・組み立てる作業のことを意味します。
構造物は鉄筋とコンクリートが協力して荷重を支持する仕組みになっており、鉄筋の配置方法が建物全体の強度を左右します。
具体例を挙げると、梁構造を作るためには、上下に主要鉄筋を設置し、それらを固定するための補強鉄筋も同時に組み込みます。
これに用いる各鉄筋の段数、使用本数、配置間隔などを総合的に計画することが、「配筋」です。
配筋図を書く目的
配筋図を作成するのには以下のような意味があります。
- 鉄筋の納まり具合を事前に検証するため
- 工事現場での作業指導を円滑に進めるため
- 構造品質を確実に確保するため
配筋図は、鉄筋の納まり具合の検証に欠かせません。
実際の鉄筋径や躯体のかぶりを反映させて配筋図を作成することで、鉄筋間の距離や全体的な配置バランスを事前確認できます。
また、詳細な配筋図があれば、現場作業員に対して明確な指示を出すことができ、作業効率や仕上がり品質の向上にもつながるでしょう。
さらに、鉄筋コンクリート構造物の強度・耐久性は鉄筋の配置状況に大きく左右されます。
品質確保のためにも、配筋図は役立ちます。
このように、配筋図は現場の業務効率化に必要なものですが、業務効率化は「新3K」実現のため、建設業にとって重要な課題です。
新3Kの詳細や実現に向けた取り組みについては、「建設業の「新3K」とは?注目の背景や取り組みなどを詳しく」をぜひお読みください。
配筋図に書かれる配筋の種類
配筋図では、建築物の構造要素に対応したさまざまな鉄筋配置パターンが表現されます。
ここでは、配筋図に書かれる主要な4つの配筋の種類について、それぞれの特徴と役割を説明します。
柱の配筋
柱部材では、コンクリート外表面を起点として、かぶり、せん断補強筋径(帯筋・フープ)、主筋径の順序で鉄筋が配置されます。
また、構造的に大きなせん断力が作用する箇所では、補強必要量次第で、帯筋サイズと同等または一回り小さい鉄筋を使用した中子筋(なかごきん)を帯筋間に追加配置する場合があります。
これにより、柱の耐力を向上させることが可能です。
壁の配筋
壁構造の配筋方法は、シングル方式とダブル方式の2パターンに大別されます。
シングル配筋では縦方向と横方向の鉄筋を定められた間隔で1層配置し、ダブル配筋ではこの配筋を2層重ねて配置します。
壁の厚みが増す耐力壁ではダブル配筋を採用することが多く、耐力負担のない壁ではシングル配筋を基本とします。
スラブの配筋
スラブの配筋は、鉄筋コンクリート床構造における配筋を指します。
スラブの上面・下面にかぶりを設けて、碁盤目状に交差させた鉄筋網を設置します。
長方形の床におけるスラブ配筋では、短いほうが主筋、長いほうが配力筋となります。
主筋は荷重の伝達を担うもので、スラブの短い方向と平行に配置します。
一般スラブの場合、梁との接合部で主筋を曲げ加工して梁内部に定着させます。
また、片持スラブという特殊形態もあり、この場合、自由端側の上部主筋を下向きに曲げ加工して端部を閉じ込む定着方法を使用します。
梁の配筋
梁構造では、コンクリート外表面から順に、かぶり、せん断補強筋径(肋筋・スターラップ)、主筋径という配置順序になります。
上端筋・下端筋の中央部に腹筋を配置した場合には、腹筋の位置ずれを防ぐため巾止め筋で固定します。
柱と同様に、大きなせん断力が作用する部位では中子筋を追加配置することもあります。
配筋図の作成方法
配筋図の作図は、鉄筋配置がコンクリート外面から一定距離内側の「かぶり」領域内に限定されるため、外側から内側へと段階的に寸法を決定していく手法を取ります。
ここからは、配筋図を作成する際の必要項目や実際の作図手順を詳しく説明します。
配筋図作成に必要な項目
まずは、配筋図作成において必須となる4つの要素について説明します。
①外形寸法
配筋図を作成するには、外形寸法が必要です。
断面図や躯体図に記されている躯体の外形寸法線を基準として、「かぶり→ふかしコンクリート厚→帯筋→スターラップ径→主筋径」の順序で、内側に向かって段階的に寸法設定しながら、作図を進めます。
②かぶり寸法
「かぶり」とは、内部の鉄筋を保護するためのもの。
外面コンクリート表面から最も外側に配筋された鉄筋表面までの距離寸法はかぶり寸法と呼びます。
柱や梁など、せん断補強筋を巻く構造では、主筋ではなくせん断補強筋表面までがかぶりとなるので注意が必要です。
③ふかし寸法
「ふかし」とは、梁と壁の接合部において微細な段差や隙間が生じて納まりが不適切な場合に、コンクリートを追加で打設して梁幅や梁下端を構造図面の躯体寸法より拡大した部分のことです。
配筋図では、ふかしを含めた外形線を基準として内側への作図を行います。
④鉄筋の方向
鉄筋の方向も、配筋図作成において重要なポイントです。
梁はX・Y両方向に水平展開するため、梁断面図では主筋を○記号で表現します。
同じように壁断面図では横筋を○、縦筋を縦線で表し、壁平面図では縦筋を○、横筋を横線で表現します。
配筋図の専門用語と記号
配筋図で使用される専門用語と記号類について説明します。
配筋図の専門用語
先ほどからも何度か出てきていますが、配筋図では、以下のような専門用語が用いられます。
- 主筋:柱・梁の主要鉄筋で引張力を受け持つ
- 帯筋:柱周囲を囲む配筋でせん断力を受け持つ
- あばら筋:梁周囲を囲む配筋でせん断を受け持つ
- 上端筋:梁・スラブ上部の配筋
- 下端筋:梁・スラブ下部の配筋
- 配力筋:主筋に直交する配筋でひび割れ防止効果
- 継手:鉄筋同士の接続部
- ピッチ:鉄筋配置間隔
- フック:鉄筋端部の曲がり部 など
配筋図の作成においては、これらの基本的な用語についてはしっかり意味を押さえておきましょう。
配筋図の記号
配筋図では、以下のような記号が用いられます。
- SD〇〇〇:鉄筋の強度・種類を表す記号(例:SD295A、SD345)
- D〇〇:鉄筋径を表す記号(例:鉄筋径10mmならD10)
- @〇〇:配置間隔を表す記号(例:配置間隔300mmなら@300)
- 〇〇°フック:フックの角度を表す記号(例:90°フック・135°フック)
- 〇〇d:鉄筋を重ねてつなげる重ね継手部分の寸法を表す記号(例:30d、45d)
鉄筋径については、●や○などの記号を使い、さらに記号化することもあります。
例えば、D10を●で表し、D16は○で表すなどです。
配筋図をスムーズかつ正確に作成するには、これらの記号についてしっかり理解しておくことが大切です。
配筋図の書き方手順(ベタ基礎の例)
建築物の基礎にはベタ基礎・布基礎・独立基礎などがあります。
ここでは、現在の住宅建築で普及しているベタ基礎を例に挙げ、配筋図の作成方法を手順を追って紹介します。
ステップ1:ベタ基礎外形形状の作図
まずは、ベタ基礎の外形形状を書いていきます。
住宅規模の基礎では、立上り部分150mm、スラブ部分150mmの厚さで作成するのが標準的です。
また、設計GL基準で、立上り部分400mm高、根入れ250mm深程度が一般的な寸法設定となります。
ステップ2:捨てコンクリート・砕石の記載
次に、捨てコンクリートと砕石の外形を記入します。
捨てコンクリートは50〜100mm厚で、砕石は100mm厚程度で記載していきましょう。
ステップ3:コンクリート内部鉄筋状況の記載
外形が定まったら、鉄筋の位置や長さ、形状を追加していきます。
このとき、鉄筋のサイズはもちろん、配筋のピッチ・重ね継手長などの各要素に注意するようにしましょう。
ちなみに、捨てコンクリート部分には鉄筋を配置する必要はありません。
ステップ4:寸法・注釈の記載
ここまで完成したら、各種寸法や注釈など、細かな情報を記載していきます。
ステップ5:ハッチングの記載
最終段階として、コンクリートや砕石部分にハッチング(特定の色や線によって、その部分を視覚的に表現すること)を追加し、より図面を見やすくします。
これで、基本の配筋図は完成です。
配筋図をはじめとした図面の作成については、ITツールを活用した業務効率化も検討すると良いでしょう。
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「建設業で活用できるサブスクサービスとは?活用して業務効率化を」でご紹介していますので、あわせてご覧ください。
配筋図の理解を深めて建設業務の品質向上を
配筋図は、建築物の建築において、構造の安全性・品質を確保するために不可欠な図面です。
鉄筋コンクリート構造物のどこに・どのように鉄筋を配置するかを示すこの図面は、納まりの事前確認や円滑な工事の進行などに役立ちます。
配筋図に書かれる配筋の主な種類としては、柱や壁、スラブ、梁が挙げられます。
これらの配筋を、外形寸法やかぶり寸法、ふかし寸法、鉄筋の方向を意識しながら、外径から内側へと手順を踏んで記載していくことで、配筋図を作成することができます。
配筋図の作成にあたっては、情報をよりわかりやすくするためにも、記号を用いるようにしましょう。
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