こんにちは!ITの力で建設業界に貢献するアークシステムです。
法定福利費とは、健康保険法、労働基準法、構成年金保険法などの法律によって定められた「企業側の負担が義務付けられている福利厚生費」です。
つまり、福利厚生費の一部が法定福利費となります。
今回のコラムでは、法定福利費に含まれる項目や、福利厚生費との違いを解説します。
現在、建設業界では見積書に法定福利費の内訳を記載するルールになっているので、その背景や算出方法についてもお話しします。
※2023年5月時点での情報です
目次
法定福利費とは?福利厚生費との違いも確認
福利厚生とは、社員の健康維持やモチベーションアップなどを目的に、給与以外に提供する費用やサービス。
その中でも法定福利費とは、法律で企業側が負担を義務付けられている制度にかかる費用のことです。
具体的には、社会保険料や雇用保険料の企業負担分などが該当します。
企業や従業員が加入要件を満たしている場合は、社会保険や雇用保険に必ず加入する必要があるため、企業も費用の負担をしなくてはいけません。
企業にとっても少なくない負担ですが、従業員に安心して長く働いてもらうためには欠かせない費用となっています。
一方、法律で定められているわけではないけれど、それぞれの企業が独自に行なっている福利厚生制度にかかる費用を「福利厚生費」と呼び、法定福利費とは別に計算されます。
法定福利費と福利厚生費の大きな違いは、法律で定められている費用かどうかという点です。
福利厚生費の具体例としては、住宅手当、通勤手当、制服貸与、慶弔見舞金、社員旅行費用、歓送迎会費用などがあります。
法定福利費に含まれるものを詳しくチェック
法定福利厚生費に含まれる項目は、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」「労災保険料」「子ども・子育て拠出金」の6つ。
それぞれ詳しくご紹介します。
健康保険料
従業員やその家族が加入し、被保険者や被扶養者が病気やけがをしたとき、医療費の自己負担が軽減されます。
健康保険の適用を受ける事業所に勤務する会社員・公務員などの正社員が対象です。
しかし、アルバイトやパートなどの短時間労働者であっても次のような条件に該当する場合は、健康保険への加入義務があります。
- 従業員が常時100人を超える事業所に勤務している(令和6年10月からは常時50人を超える事業所)
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 継続して2カ月を超える雇用見込みがある
- 賃金が月額88,000円以上である
- 学生ではない
健康保険の保険料率は、加入先が「協会けんぽ(全国健康保険協会)」か「健康保険組合」なのかで異なります。
協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに定められており、健康保険組合の保険料率は組合が独自で定めています。
保険料は従業員と企業で折半して負担します。
厚生年金保険料
老後(原則65歳以上)の老齢や障害、死亡に対して給付金をもらうための保険制度です。
厚生年金は基礎年金である国民年金に上乗せして支給される年金であることから、厚生年金に加入している人は、老後に受け取れる給付が手厚くなります。
厚生年金の加入条件は、原則として健康保険加入者と同一です。
2023年5月時点の保険料率は18.3%。
保険料は従業員と企業で折半して負担します。
介護保険料
介護サービスを利用している人を支援するための保険制度です。
65歳以上は第1号被保険者、40~64歳の方は第2号被保険者となり、介護保険料が発生します。
40歳から64歳までの健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に介護保険料を納め、保険料は従業員と企業で折半して負担します。
保険料率は、加入する医療保険(協会けんぽ、健康保険組合など)によって異なります。
65歳以上の第1号被保険者は、住まいの市区町村より介護保険料が徴収されます。
雇用保険料
離職時に再就職までの給付や、育児や介護などで長期休業する際の給付をするための保険制度です。
雇用保険の加入対象者は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上継続して雇用見込みのある従業員です。
保険料率と従業員・企業の負担割合は業種によって異なります。
2023年5月時点の雇用保険料率は以下の通りです。
- 建設の事業:雇用保険料率1.85%(本人負担0.7%、事業主負担1.15%)
- 一般の事業:雇用保険料率1.55%(本人負担0.6%、事業主負担0.95%)
- 農林水産・清酒製造の事業:雇用保険料率1.75%(本人負担0.7%、事業主負担1.05%)
労災保険料
仕事や通勤が原因とするケガ、病気、死亡に対する補償金を給付する保険制度で、正式名称は労働者災害補償保険料といいます。
従業員を1人でも雇っている企業は、必ず労災保険に加入しなくてはいけません。
労働保険は雇用形態を問わず、すべての従業員に加入義務があり、保険料は企業が全額負担します。
労災保険料率は業種ごとに細かく定められています。
子ども・子育て拠出金
国や地方自治体が子育て支援サービスを行うために、企業から徴収する費用です。
従業員の子どもの有無に関係なく、厚生年金に加入している方全員が対象です。
従業員の給与に応じて拠出金額が算定されますが、拠出金は企業が全額負担します。
2023年5月時点の拠出金率は0.36%です。
法定福利費の会計計上方法も知っておこう
会計処理では、企業負担分の法定福利費は納付時に「法定福利費」という勘定科目で仕訳・計上します。
一方、本人負担分については給与天引きで企業が預かって会社が本人に代わって納付するので、給与支払い時に「預り金」という勘定科目で仕訳・計上し、納付により「預り金」が清算されます。
子ども・子育て拠出金や労災保険料はその全額が企業負担のため、預り金は発生しません。
健康保険、厚生年金保険、介護保険料、子ども・子育て拠出金に関しては、一般的に4・5・6月の報酬の平均額から求めた標準報酬月額にそれぞれの保険料率をかけて算出。
雇用保険料と労災保険料に関しては、賃金総額にそれぞれの保険料率をかけて算出します。
保険料率については、健康保険料や介護保険料は協会けんぽ(または加入する保険組合)、厚生年金保険料は日本年金機構、雇用保険料は厚生労働省のwebサイトなどで確認できます。
建設業では見積書に法定福利費の内訳明示が必要!
法定福利費は、従業員に安心して長く働いてもらうために必要な費用の一つです。
積算においては、現場作業員の法定福利費は工事費を構成する直接工事費の「労務費」として算出され、工事費の見積に積み上げていきます。
現場以外の従業員の法定福利費については、「一般管理費」として算出されます。
労務費や一般管理費については、こちらのコラムでも詳しくお話ししておりますので、あわせて参考にしてみてください。
建設業の積算における労務費とは?人件費との違いや計算法もチェック
積算における一般管理費とは?内訳や一般管理費等率の改定も確認!
建設業界では2013年から、見積書へ法定福利費の内訳を記載するというルールが定められました。
その背景には、建設業界では下請けの零細・中小企業で社会保険や労働保険の加入義務があるにも関わらず、経費削減などを目的に保険に加入していない企業が存在するという問題がありました。
建設業の現場は肉体労働が多くケガのリスクも大きいため、社会保険や労働保険に加入することはとても重要です。
社会保険の加入の義務についてや、未加入のリスクについてはこちらのコラムでも詳しくご紹介しています。
建設業も社会保険加入は義務!加入が必要なケースや未加入のリスクも
このような社会保険・労働保険の未加入問題を解決するためにも、見積書へ法定福利費の内訳を工事費とは別に明示するルールが定められたのです。
内訳を明示するのは、現場労働者の法定福利費が対象です。
建設工事の見積もりに明示する法定福利費の基本的な算出方法は以下になります。
■法定福利費=労務費総額×それぞれの保険料率
まずは工事ごとの労務費を算出し、その労務費をもとにそれぞれの保険料率をかけて保険料ごとの法定福利費を算出。
見積書には、保険料の種類、労務費、法定福利費が分かるように明示します。
そのほか、工事費や工事数量に平均的な法定福利費の割合をかけて法定福利費を算出する方法もあります。
■法定福利費=工事費×工事費当たりの平均的な法定福利費の割合
■法定福利費=工事数量×工事数量当たりの平均的な法定福利費の割合
法定福利費を内訳明示した見積書の提出は、法的な義務ではありませんが、国土交通省も「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」などで推進をしています。
見積書に必要な構成・項目については、こちらのコラムでも詳しくご紹介していますので、あわせてご参考ください。
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法定福利費は法律で義務付けられた福利厚生にかかる費用
法定福利費とは、企業が従業員に提供する福利厚生の中で、法律で義務付けられているものにかかる費用です。
具体的には、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料、子ども・子育て拠出金の企業負担分が該当します。
企業や従業員が加入要件に該当する場合は必ず加入し、企業負担分の費用負担が必要となります。
建設業界では長く健康保険や雇用保険の未加入問題があり、それを解決するためにも2013年から見積書へ、工事費とは別に法定福利費の内訳を明示することがルール化されました。
法定福利費の内訳を明示することで、工事費ごとの請負金額の中で法定福利費を確保しやすくすることを目的としています。
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