こんにちは!ITの力で建設業界に貢献する「アークシステム」です。
2020年に、建設業の社会保険加入は実質的に義務化されました。
これにより、それまで未加入率の高かった建設業界でも社会保険加入が進んでいます。
ただし、義務化といっても加入には一定の要件が定められており、事業の形態によって加入すべき保険は異なります。
では、建設業ではどんな場合にどの保険へ加入すれば良いのでしょうか。
今回は、建設業と社会保険の加入義務について詳しく解説します。
目次
建設業の社会保険加入は義務!義務化の背景と実情
医療保険(健康保険)や年金保険(厚生年金や国民年金)、雇用保険等といった公的保険を、社会保険と呼びます。
社会保険は、病気になったり失業したりといったリスクに対する補償を行うもので、この加入には労働との深い関連性があります。
労働者として給与を受け取っている場合、社会保険への加入は、勤務している会社を通して行うのが一般的です。
近年、国は事業者に対する社会保険への加入指導に力を入れています。
建設業においては、2020年10月の建設業法改正により、社会保険への加入が実質的に義務化されました。
これを受け、建設業者が500万円以上の工事を請け負う場合に必要な建設業許可の取得に際しても、社会保険への加入が要件のひとつとなっています。
社会保険加入義務化の背景
社会保険加入義務化の背景には、これまでの建設業における社会保険未加入事業者の多さがあります。
国土交通省の2011年の調査では、「建設業の2次・3次下請け労働者の約4割が社会保険に加入していない」というデータが出され、建設業の社会保険加入率の低さが注視されるようになりました。
この状況を受け、国は建設業に対する社会保険への加入指導を強化し、2020年の加入義務化に至ります。
建設業は人材不足が深刻な業界ですが、その原因のひとつに「社会保険への加入率の低さ」が影響していると考えられます。
社会保険が整備されていない職場に就職することを、ためらう人は多いでしょう。
このままでは、若い世代の人材が集まらず、建設業従事者の高齢化が進む一方となってしまいます。
人材不足という課題を解決するためにも、建設業では社会保険加入を進める必要があるのです。
建設業の若者離れについては、こちらのコラムもご覧ください。
建設業で若者離れが進んでいる理由は?具体的な解決策についても解説!
なぜ保険に加入しない事業者が多いのか
建設業に社会保険未加入が多い原因は、業界特有の構造にあります。
多くの建設工事は、元請け、一次下請け、二次下請けと、何層もの下請け構造で成り立っています。
そのため、労働者の社会保険を一元的に管理することは難しく、多くの未加入が発生していると考えられます。
また、それぞれの業者が受注契約を勝ち取るためには、受注価格の安さが決め手のひとつとなります。
そのため、より安い受注価格を提示し受注を受けようと、下請け会社がコストを下げる目的で社会保険に加入しないケースも。
社会保険料は決して安いものではないため、その支払いを躊躇する業者も多いのです。
また、個人事業主にあたる一人親方として働く人が多いことも、未加入率の多さに関係しているでしょう。
個人事業主は労働者ではないため、一般的な社会保障の対象にはなりません。
ただし、個人事業主が加入できる保険制度も存在します。
建設業で社会保険加入の義務があるのはどのような場合?
建設業の社会保険加入は実質義務化されています。
とはいえ、この加入義務にも要件はあり、それは事業の形態や社会保険の種類によって異なります。
事業形態による社会保険の種類
まずは、法人・個人経営・一人親方、それぞれの事業形態および就労形態における社会保険の種類をご紹介します。
【法人の場合】
【個人事業主の場合】
このように、事業形態や就労形態によって、加入する保険の種類は異なります。
また、それぞれの要件によって、保険料の事業主負担の有無やその率も変わります。
労災保険の特別加入とは、労働者ではなくとも、一定の要件を満たすことで加入が認められる労災保険制度のこと。
通常の労災保険適用外となる中小事業主や一人親方等、特定作業従事者、海外派遣者を主な対象として整備されています。
社会保険加入の適用条件
次に、社会保険加入の適用条件を社会保険の種類ごとに見ていきましょう。
【雇用保険】
- 労働者:強制加入
- 事業主・代表者・役員:加入不可
- 65歳以上または学生・生徒:除外
【労災保険】
一人でも労働者を雇用する事業すべてに加入義務が生じる
個人事業主や代表権・業務執行権を有する役員、事業主と同居の親族、海外派遣者等は除外
※特別加入が可能なケース有り
【医療保険】
- 常時従業員数が5人未満の個人事業主:協会けんぽ等の適用外(個人で国民健康保険に加入)
- 法人事業所または常時従業員数が5人以上の個人事業主:協会けんぽ等適用
- 上記事業所における常用労働者:強制加入
- 上記事業所における法人代表者・役員:強制加入
- 上記事業所における個人事業主・家族従事者:除外
- 上記事業所における常用ではない短時間労働者:除外
- 上記事業所における季節労働者等:除外
【厚生年金】
- 常時従業員数が5人未満の個人事業主:適用外(個人で国民年金に加入)
- 法人事業所または常時従業員数が5人以上の個人事業主:適用
- 上記事業所における常用労働者:強制加入
- 上記事業所における法人代表者・役員:強制加入
- 上記事業所における個人事業主・家族従事者:除外
- 上記事業所における常用ではない短時間労働者:除外
- 上記事業所における季節労働者等:除外
この要件を見ると、雇用保険と労災保険では労働者を雇用する建設事業者すべてに加入義務が生じることがわかります。
また、医療保険と厚生年金については、常用労働者が5人以上か5人未満かで、対応が変わります。
社会保険料は「法定福利費」で計上。積算時にはソフトも活用を
工事費用を積算する際には、労働者の社会保険料も計上する必要があります。
この時、社会保険料は「法定福利費」に分類します。
また、その法定福利費を明示した見積書の提示も必要になります。
法定福利費については、「法定福利費とは? 含まれる項目や建設業での見積書についても解説」で詳しくご説明しているので、参考にお役立てください。
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建設業で社会保険未加入だとどうなる?
建設業で社会保険加入義務を持つにもかかわらず、これに加入しなかった場合、その事業者には次のようなリスクが発生します。
- 建設業許可が下りなくなる
- 公共工事・民間工事問わず入札や契約が難しくなる
- 追徴金や罰金が課される
- 人手不足がさらに深刻になる
- 万が一の際の従業員の生活が守られない
義務付けられている社会保険に未加入でいると、上記のように業務上の不利益が発生します。
また、追徴金を徴収されたり人材が集まらなかったりして、事業継続が難しくなることもあるでしょう。
特に気をつけたいのが、建設業許可が下りなくなる(更新できなくなる)点です。
500万円以上の工事で必要になる建設業許可が下りないとなると、事業者は規模の大きな仕事を受注できなくなり、利益を上げることが難しくなります。
建設業許可については、こちらのコラムでも詳しくご紹介しています。
管工事業の内容とは?水道施設工事との違いや建設業許可の要件も
建設業には社会保険加入義務あり!未加入は罰金のリスクも
2020年10月の建設業法改正により、建設事業者の社会保険加入は義務となりました。
従来の建設業は、構造上社会保険への未加入率が高い傾向にありましたが、この法改正により建設業界における社会保険加入は増加しています。
ただし、事業形態や就業形態によって、加入すべき保険の種類や加入の可否は異なります。
これらの要件はやや複雑ですが、リスクを避けるためにも、正確に把握しておくことが大切です。
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