こんにちは!ITの力で建設業界に貢献するアークシステムです。
近年、建設業界では鋼材や生コンクリートなどの資材価格が急激に上昇し、
積算や見積に苦慮しているという方も多いでしょう。
見積時点の金額では最終的に利益を確保できないケースがあるかもしれません。
そのような状況で会社を守る制度が「スライド条項」です。
ただし、制度を実際に機能させるには、正確な積算根拠と申請タイミングを
逃さない体制が欠かせません。
今回は、スライド条項の概要と目的から、適用範囲の違い、実際の請求手順まで
わかりやすく解説します。

目次
スライド条項とは?
まずは、スライド条項の概要から、民間工事での適用可否まで順にご説明します。
【スライド条項】
急変動した場合に、発注者と受注者が協議して請負代金(契約金額)を
見直し・変更できる制度
スライド条項の目的
公共工事においては「公共工事標準請負契約約款」の第26条に定められているため、
国や地方自治体が発注する工事には原則として組み込まれています。
制度の目的は、変動リスクを「発注者と受注者が公平に分担すること」にあります。
工事期間が長くなるほど、契約時には予測できなかったコスト増が生じる可能性は高まります。
工期中に発生したリスクを全て受注者だけが負担するのではなく、一定のルールに基づいて双方が負担し合う仕組みがスライド条項といえます。
参考:国土交通省「工事請負契約書第26条(スライド条項)について」
「昨今の資材高騰で注目されている新しい制度では?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は1950(昭和25)年策定の「建設工事標準請負契約約款」の当初から存在しています。
物価が安定していた時代には出番が少なかったものの、近年の急激な資材高騰を受けて、あらためて広く活用されるようになったといえるでしょう。
民間工事にも適用できる?
スライド条項は公共工事の約款に規定されていますが、民間工事でも適用できる場合があります。その際の重要なポイントは「契約書への記載が前提」となることです。
民間工事で広く使われている「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」にも物価変動に伴う代金変更の規定は設けられています。
そのため、自社の契約書に代金変更に関する条項が記載があれば原則、適用可能です。
民間工事を請け負うことの多い企業は、自社の契約書や注文請書のひな型を今一度確認してみましょう。
もし記載がない場合は「予測困難な程度の物価変動が生じた際は、協議の上で代金を変更できる」旨の条項を事前に盛り込んでおくことをおすすめします。
改正建設業法でスライド条項を活用しやすく
2025年12月に施行された改正建設業法により、スライド条項を活用しやすい環境がさらに整いました。
改正法の中で、スライド条項に関わる主なポイントは次の2点です。
1. リスク情報の通知義務
資材の価格高騰や入手困難が生じるおそれがあると認める場合、受注者は契約締結前に発注者へ通知しなければなりません。
2.誠実な協議の努力義務
受注者から価格変更の協議を申し入れられた場合、発注者側は誠実に応じる努力義務を負います。
スライド条項には3種類ある

スライド条項は、物価変動の種類や工事の規模によって
「全体スライド」「単品スライド」「インフレスライド」の3種類に分けられます。
3種類のスライド条項
3種類のスライド条項は、適用条件や受注者の負担割合がそれぞれ異なります。
自社の工事にどの種類が当てはまるかを正しく把握しておきましょう。
① 全体スライド(第26条第1〜4項)
全体スライドは、工期が長い工事を対象に、時間の経過に伴う物価・賃金水準の緩やかな変動に対応するための条項です。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 工期が12カ月(1年)を超える工事であること
- 契約締結日から12カ月を経過していること
- 残工期が2カ月以上あること
- 残工事費に対する変動額が1.5%を超えること
受注者は残工事費の1.5%までを自己負担することが前提で、それを超える分が請負代金の変更対象となります。
② 単品スライド(第26条第5項)
単品スライドは、鋼材や生コンクリート、アスファルトといった「特定の主要資材」の価格が短期間で著しく高騰した場合に適用される条項です。
契約から12カ月を待たずに適用できるため、近年の激しい資材高騰において
多く活用されています。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 全ての工事が対象(工期の長短を問わない)
- 残工期が2カ月以上あること
- 対象資材の価格変動額が、変動前残工事額×1%を超えること
ここで必ず押さえておきたいのは「対象工事費の1%分は受注者の自己負担」になるという点です。資材の高騰分が全て補填されるわけではなく、1%を超えた部分を発注者に請求できます。
申請を検討する際は、この自己負担ラインを念頭においた計算が必要です。
③ インフレスライド(第26条 第6項)
インフレスライドは、予期できない急激なインフレーション(物価の急上昇)や
デフレーションが発生した際に、残工事分の代金を見直せる条項です。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 全ての工事が対象
- 残工期が2カ月以上あること
- 残工事費に対する変動額が、変動前残工事額×1%を超えること
全体スライドと異なり、契約から12カ月を待たずに請求できる点が特徴で、急激な物価変動が起きた局面で迅速に対応できる条項として位置づけられています。
3種類の併用について
全体スライドと単品スライド、またはインフレスライドと単品スライドの組み合わせは併用可能です。全体スライドとインフレスライドは対象領域が重なるため、併用できません。
併用する場合は、全体スライドまたはインフレスライドでまず算定し、対応しきれない個別資材の変動分を単品スライドで補完するという順序が基本です。
二重計上を防ぐために単品スライドの算定時には、全体スライドもしくはインフレスライドで反映した分を差し引く必要があります。
スライド条項の請求を行う流れ

スライド条項を実際に活用するには、受注者側からアクションを起こし、
発注者と合意形成する必要があります。
請求から変更契約の締結までの一般的な流れを4つのステップで整理します。
資材費の高騰などにより契約金額が不適当になったと判断したら、受注者から発注者へ協議を申し入れます。
その際「工事請負契約書第26条第5項に基づく請負代金額変更の請求について」といった書面を用意しましょう。
重要なのはタイミングを逃さないことです。
工事が完了してから申し出ても、発注者側の予算確保が間に合わずに協議が難航するケースがあります。
資材価格の上昇傾向が見えた時点で、速やかに行動に移しましょう。
請求を受けた発注者は、請求日から7日以内に協議の開始日を定め、受注者に通知します。
この協議開始日を基準として、スライド条項の適用要件(残工期や金額など)を満たしているかが判断されます。
要件を満たさない場合は適用が認められないため、申請するタイミングにも注意が必要です。
受注者は、契約時の単価と現在の単価の差額および対象資材の数量を証明する書類をそろえ、発注者に提出します。
必要な証拠資料のポイントは以下の3点です。
- 数量の根拠
- 価格の根拠
- 期間の特定
【数量の根拠】
出来高から差し引いた残数量(発注書・納品書・出来高報告書などで裏付け)
【価格の根拠】
契約時の設計単価と請求時の実勢単価の差額(建設物価調査会のデータやメーカーの見積書・購入伝票など複数の資料で裏付ける)
【期間の特定】
どの時点からどの時点までの変動を対象とするかの明示
これらの資料が不足していると、協議が長引いたり申請が認められなかったりするリスクがあります。
算定結果に双方が合意したら、変更契約(増額)を締結します。
増額分の支払いは完工時の精算と合わせて行われるのが一般的です。
協議の内容は口頭で終わらせず、以下の点を議事録として記録に残しましょう。
- 適用するスライド条項の種類
- 対象範囲と算定方法
- 算定結果
- 次回アクション
根拠のある積算がスライド条項を味方につける!

スライド条項は、正しく活用すれば、資材高騰から会社を守る強力な制度ですが、
制度を有効に機能させるには、正確な積算データと迅速な対応が欠かせません。
ここでは、条項を生かすために必要な積算・原価管理のあり方をお伝えします。
手書き・表計算ソフトでの対応の限界
物価変動や工期変更に伴うスライド条項の適用には、迅速な見積修正が欠かせません。
しかし、膨大な項目を抱える現場で、手書きや表計算ソフトを使ってこれらに対応することに限界を感じているという方も多いでしょう。
せっかくの制度も、申請の遅れや計算ミスで活用できなければ、損失に直結します。
今、建設業界に求められているのは、環境の変化に対応できる「デジタル基盤」の構築です。
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スライド条項を味方に正確な積算で会社の利益を守ろう
スライド条項は、工期中の資材高騰や物価変動に対して、発注者と受注者がリスクを公平に分担するための制度です。
全体・単品・インフレの3種類があり、適用条件や受注者負担の割合はそれぞれ異なります。
制度の活用には正確な証拠資料の準備が不可欠です。
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