こんにちは!ITの力で建設業界に貢献するアークシステムです。
建設業法は建設業に関わる人なら必ず知っておくべき法律。
1949年に制定されてから、建設業界の隆盛や時代背景などに合わせて、改正が続けられてきました。
2020年には約25年ぶりとなる大きな改正があり、その後も毎年一部改正が実施されています。
そこで今回のコラムでは、建設業法の近年の改正ポイントを解説します。
業務に直接関わる重要な内容が多いので、ぜひ最後までお読みください。
※2025年7月現在の情報です
目次
建設業法とは?まずは基本と改正の背景から解説
建設業法とは、建設業に関する多くのルールを定めている法律です。
建設業は、日本の経済成長や社会の発展に欠かせない業種。
戦後の復興で建設業者が急増した1949年に制定され、その後は時代背景などに合わせてたびたび改正されてきました。
建設工事における不正や現場でのトラブルは、経済的な損害だけでなく、事故や災害のリスクにもつながります。
そこで、建設業者の資質向上と請負契約の適正化について規定することで、工事の適正な施工、発注者の保護、建設業の健全な発達の促進を図り、社会全体の利益増進を目指すことが、建設業法の目的です。
例えば、建設業法ではこんな規定が定められています。
- 建設業を営むためには、業種ごとに許可を受けなくてはいけない
- 建設工事の請負契約は対等で公正な契約とし、契約書に内容を記す
- 経費の内訳を明確にした見積書を作成する
- 工事現場には定められた技術者を配置する
建設業法に違反すると、罰金や許可取り消しなど厳しい処分が課せられる場合もあります。
建設業法の目的や内容についてはこちらのコラムでも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
建設業での下請法と建設業法の違いを解説!適用されるケースとは
近年の建設業法改正の背景
近年の建設業界は、人手不足や建築資材の高騰などの影響を受けています。
特に人手不足は深刻であり、これからの建設業界を維持するためには、将来の担い手を確保しなければなりません。
国土交通省の資料※によると、2023年時点で建設業に従事する労働者の中で55歳以上は36.6%を占め、29歳以下の若年層は11.6%。
全産業(55歳以上:31.9%、29歳以下16.7%)と比較してもとくに高齢化が進んでいて、将来の担い手不足が懸念されています。
※参照:国土交通省「改正建設業法について」
これらの課題を解決するため行われているのが、昨今の建設業法改正です。
この改正では、労働環境や労働者の処遇を改善することで、労働者を確保することを一つの目的としています。
また、IT技術の活用推進による生産性向上や資材高騰対策による事業者の負担軽減も、重要な目的です。
近年における建設業法の改正項目は多岐に渡ります。
しかしどの項目も、建設業界の今後にとって、非常に重要なものだといえるでしょう。
建設業法2020年改正のポイントを解説!
建設業法の2020年改正では、約25年ぶりとなる大幅な改正が行われました。
改正の背景となったのは、建設業界の人手不足問題です。
新たに盛り込まれた規定には、主に次のようなものがあります。
- 働き方や環境の整備
- 現場の生産性向上
- 事業継承等を円滑にする
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
働き方や環境の整備
次のように、下請け業者を守るための緩和や規制が盛り込まれました。
著しく短い工期での契約締結を禁止
無理な工期による長時間労働などを防ぎ、工事の適正化を図ります。
中央建設業審議会において作成された工期に関する基準※で示す事項や、過去工事の実績などが基準となります。
※参照:中央建設業審議会 工期に関する基準:令和2年7月20日
工期に影響を及ぼす事項についての情報提供義務
発注者は請負業者に対して、工期などに影響をおよぼすとみられる情報を事前に提供する義務があります。
また、請負業者は発注者へ見積を提出する際、工程の細目や工程ごとの作業日数を明確にして見積をする努力義務を負います。
建設業法における建設工事の見積については、「建設業法における見積期間とは?わかりやすく解説!」もお読みください。
下請代金のうち「労務費相当分」を現金払いとする義務
元請業者が下請業者へ支払う下請代金のうち、労務費相当分は現金払い(銀行振り込みや銀行振出小切手払い含む)とする義務があります。
下請業者が労働者へ賃金を滞りなく支払う環境を整えるためです。
「工事を施工しない日・時間帯」を定める場合は契約書に明記
労働環境を改善し、明確化する目的で盛り込まれました。
請負契約の契約書に曜日や時間を具体的に記載するか、契約書には原則のみを記載して、詳細は特記仕様書等に別途記載します。
現場の生産性向上
建設現場の生産性を向上させることを目的として、次のような見直しがありました。
工事現場の技術者配置のルールを合理化
元請の監理技術者、下請の主任技術者の現場配置について、一定の条件を満たせば監理技術者が2つの現場を兼務でき、下位業者は主任技術者の配置が不要となりました。
認可行政庁が建設資材製造業者に対して改善勧告・命令が可能
施工不良の原因が施工に使用された資材にあった場合でも、行政は施工業者のみならず建設資材製造業者に直接勧告・命令できるように。
それにより、建設業者が資材に対して担う責任負担が軽くなりました。
事業継承等の円滑化
事業環境の持続が課題になっている中、その解決手段として次の内容が加わりました。
許可要件の合理化
建設業の許可要件から「役員に5年以上の経験者がいること」を排除し、「事業者全体で適切な経営管理責任体制になっていること」を要件としました。
合併、事業譲渡における事前許可手続き、相続における認可手続きを新設
合併や事業譲渡、相続の場合での建設業の許可取得をスムーズにし、「許可を取得するまで業務ができない」という事態を回避できるようになりました。
建設業法2022年改正のポイントを解説!
2022年の改正では、特定建設業の許可および監理技術者の配置が必要となる下請代金額や、監理技術者等の専任を要する請負代金額等の金額要件の見直しが行われました。
また、技術検定制度の見直しも行われました。
どのように変わったのか、詳しく解説していきましょう。
金額要件の見直し
近年の工事費の上昇を踏まえ、次のように金額要件が見直されました。
(施行日:令和5年1月1日)
【特定建設業の許可、監理技術者の配置及び施工体制台帳の作成を要する下請代金額の下限】
- 改正前:4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)
- 改正後:4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)
【主任技術者又は監理技術者の専任を要する請負代金額の下限】
- 改正前:3,500万円 (建築一式工事の場合は7,000万円)
- 改正後:4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)
【下請負人の主任技術者の配置を不要とすることができる特定専門工事の下請代金額の上限】
- 改正前:3,500万円
- 改正後:4,000万円
※参照:建設業法施行令一部を改正する政令について(令和4年政令第353号)
技術検定制度の見直し
2022年の改正では、技術検定の受験資格を国土交通省令で定めることとし、今後、施行技術検定規則等の改正を行い受験資格の見直しを行う予定であるというものでした。
そして、2023年5月に「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令」が交付され、技術者制度の見直しの内容が明確化されました。
主な改正の内容は以下の通りです。
【受験資格の見直し(施行日:令和6年4月1日)】
学歴・実務経験による制限は撤廃され、次のように改正されました。
- 技術検定1級の第1次検定は、19歳以上であれば受験可能とする
- 1級及び2級の第2次検定は、第1次検定合格後、条件によって求められる実務経験は異なるが、一定の実務を経験することで受験可能とする
【実務経験による技術者資格要件の緩和(施行日:令和5年7月1日)】
改正前は指定学科以外の卒業者は10年以上の実務経験が求められていましたが、今回の改正で、次のように改正されました。
- 1級の第一次検定合格者を大学指定学科卒業者と同等とみなし、合格後3年の実務経験を有することで、一般建設業許可の営業所専任技術者要件を満たすこととする
- 2級の第一次検定合格者を高校指定学科卒業者と同等とみなし、合格後5年の実務経験を有することで、一般建設業許可の営業所専任技術者要件を満たすこととする
※参照:施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する政令等について
建設業許可の詳細については、「建設業許可とは?その内容をわかりやすく!要件・取得方法も解説」をご確認ください。
割増率の引き上げ
2023年3月に、時間外労働に伴う割増賃金の割増率引き上げの猶予期間が終了しました。
これにより、2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働に対し、大企業だけでなく中小企業も、50%以上の割増率を適用することが義務付けられることになりました
建設業法2024〜2025年改正のポイントを解説!
建設業法は、2024〜2025年にかけても大きな改正が行われています。
その大きな柱は次の3つです。
- 労働者の処遇改善
- 資材価格高騰による労務費へのしわ寄せ防止
- 働き方改革・生産性向上
改正内容を詳しく見ていきましょう。
労働者の処遇改善
この法改正では、労働者の処遇改善について、建設業者の努力義務としました。
その中で、以下の点が定められています。
建設業者の取り組みを国が調査・公表・報告
労働者の処遇確保を建設業者の努力義務とするにあたって、国は各業者の取り組み状況を調査・公表します。
施策の見直しが必要な場合には、中央建設業審議会に報告し、業者に対し改善を求めていくことになっています。
著しく低い労務費の禁止
今回の法改正では、中央建設業審議会が労務費の基準を作成することになりました。
そして、この基準と照らし合わせて、受注者による著しく低い労務費等の見積提出や、注文者による著しく低い見積変更依頼を禁止します。
これに違反して契約を行なった建設業者には、国土交通大臣等による勧告・公表が行われます。
不当に低い請負代金の禁止
不当に低い請負代金で契約を締結することも禁止となります。
注文者が立場を利用し原価割れとなる契約を求めること、受注者が原価割れとなる契約を受け入れ締結することは認められません。
これに違反した場合には、国土交通大臣による指導・監督、または勧告・公表が行われます。
資材価格高騰による労務費へのしわ寄せ防止
従来、資材価格の高騰や資材不足については、工事の受注者がそのリスクを負担してきました。
その結果、適切な価格転嫁が行われずに労務費が削られてしまうといった実態がありました。
これを防止するため、今回の法改正では、以下の内容の変更も行われました。
「おそれ情報(リスク情報)」の提供義務化
「おそれ情報」とは、資材の高騰や不足についての情報のこと。
工事の受注者は、契約前におそれ情報を注文者に提供する義務を負います。
請負代金等の変更方法の明記・変更協議への対応
資材高騰や資材不足を受けた場合の請負代金等の変更方法について、契約書に明記することが義務付けられました。
例えば、「材料価格に著しい変動が生じたときには、受注者は請負代金の変更を請求することができる」などの文言を契約書に記載することになります。
これを受け、実際に資材高騰などが発生した場合には、注文者は、受注者による請負代金の変更等の協議に応じる努力義務(公共発注者の場合は義務)を負います。
これらの変更は、適正な価格転嫁、労務費へのしわ寄せ改善につながります。
働き方改革・生産性向上
働き方改革・生産性向上面での変更としては、以下の点が挙げられました。
工期ダンピングへの対策
工期ダンピングとは、工事の請負契約を著しく短い工期に設定して請負契約をすることです。
今回の法改正により、中央建設業審議会が定めた工期の基準に対し、著しく短い工期での契約は、注文者だけでなく受注者に対しても禁止されます。
これに違反した業者には、指導・監督が行われることになります。
現場技術者の専任義務の合理化
兼任する現場間の移動が容易(おおむね2時間以内、1日で巡回可能な距離)であり、遠隔での現場確認が可能な場合には、情報通信機器を活用するなどの要件を満たすとき、専任技術者の設置要件が緩和されます。
具体的には、職務に支障のない範囲において、営業所技術者は主任技術者の職務を兼任可能に、監理技術者・主任技術者は複数の専任工事現場を兼任可能になります。
ICTを活用した現場管理
ICTを活用した現場管理を推進するにあたり、国が現場管理の指針を作成。
この指針では、特定建設業者や公共工事の受注者に効率的な現場管理を努力義務化することとしました。
また、公共発注者への施工体制台帳の提出義務の合理化として、ICTの活用によって施工体制を確認できる場合には、従来の提出義務を不要とします。
建設業法改正への対応
建設業法の改正について、事業者は迅速に対応していく必要があります。
主な対応としては、以下の2つが考えられます。
- 社内規定・業務体制の見直し
- ITシステムの導入
社内規定や業務体制は、法改正に対応した内容に随時変更していかなければなりません。
例えば、2024〜2025年の改正にあたっては、事業者は、契約書に請負金額等の変更方法について追記を行なったり、リスク情報の提供フェーズを追加したりする必要があります。
法律違反を避けるためにも、速やかな変更を目指しましょう。
また、法改正の中で、国はICTの活用を推進しています。
業務を効率化させるためにも、ITシステムの導入は欠かせません。
特に近年の建設業法改正にあたっては、勤怠管理システムや施工管理システムなどの導入を検討すべきでしょう。
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建設業法改正のポイントを押さえて建設業界の環境改善を
建設業法は、建設業に関する多くのルールを定めている法律。
1949年の制定以来、建設業の需要や時代背景などに合わせて改正されてきましたが、2020年には約25年ぶりとなる大きな改正が行われ、その後も状況にあわせて改正が続いています。
建設業法改正の背景となったのは、建設業界の慢性的な人手不足。
2020年改正では、働き方改革の流れを建設業界にも取り入れ、労働条件や環境を改善したり、現場や手続きのルールを合理化して生産性をアップさせたりするための新しい規定を盛り込みました。
また、2022年改正では、近年の工事費の上昇を踏まえ、金額要件の見直し並びに技術検定制度の見直しが行われました。
さらに、2024・2025年改正では、労働者の処遇改善や生産性向上のための対策のほか、近年の資材価格高騰への対策も盛り込まれています。
続く法改正に対し、建設事業者は適切かつ迅速に対応しなければなりません。
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