こんにちは!ITの力で建設業界に貢献する「アークシステム」です。
建設工事では、必ず「墨出し」という作業が行われます。
これは、図面の情報を現場に反映させる作業のこと。
正確に建物を建設するにあたって、非常に重要な役割を果たします。
では、この「墨出し」はどのような手順で行われるのでしょうか。
また、作業にあたってはどのような点に注意すべきなのでしょうか。
今回は、建設工事の「墨出し」について詳しく解説します。
目次
墨出しとは
「墨出し」とは、設計図面の情報を工事現場に反映させるための作業のこと。
墨を用い、壁や床、天井に図面の内容のとおりの線や寸法を記すことで、施工の目印を作ります。
設計図の内容を現場に原寸大で下書きしたものだと考えるとわかりやすいでしょう。
墨出しを行うことで、現場では「この高さに扉がくる」「この位置にキッチンが設置される」など、設計内容を具体的に把握することができるようになります。
この作業により、設計図面を都度確認する必要がなくなり、施工がよりスムーズに進みます。
墨出しは、基礎工事はもちろん、敷地の測量から躯体工事、配管・電気工事、仕上げまで、多くの工程で実施されています。
墨出しは、工事費では直接仮設費に分類されます。
直接仮設費について「積算における直接仮設費とは?内訳や共通仮設費との違いを確認!」で解説しておりますので、ご一読ください。
関連用語の意味
墨出しでは、作業に関連して複数の専門用語が用いられます。
ここでは、その代表的な用語と意味をご紹介します。
- 陸墨:現場の基準となる高さ(水平)を示す墨。主に床の高さを示す
- 上がり墨:陸墨より上に打つ墨
- 下がり墨:陸墨より下に打つ墨
- 芯墨・心墨・真墨:柱や壁の中心を示す墨。組み立ての精度向上に役立つ
- 返り墨・逃げ墨:対象の場所に障害物があって墨が打てない場合に、一定の距離(50cm、1mなど)を空けて打つ墨
- 親墨:最初に打つ墨。一般的には芯墨や陸墨が親墨となる
- 子墨:親墨を基準に柱や壁の位置を示す墨
これらは、墨出し作業でよく用いられる基本的な専門用語です。
墨出しに関わるなら、このような用語を事前に覚えておくと役立ちます。
墨出しのやり方
建築工事の墨出しは、大きく分けると次の4ステップ。
- 設計図を確認し、基点に印をつける
- 基点の印をもとに、柱や壁などの基準線(親墨:芯墨や陸墨)を打つ
- 芯墨・陸墨を上の階の床へ移す
- 子墨出しを行う
具体的には、行政が定める共通仕様書や特記仕様書が基準となっており、次のような手順で作業を進めていきます。
- 基本墨出し(親墨):通り芯、レベル、コンクリート天端墨、下階からの墨の移動
- 型枠用小墨出し:躯体コンクリートの位置を表示
- 型枠建込中の墨出し:設備用箱、スリーブ、ルーフドレイン、インサート、アンカー、差筋、面木、目地棒の位置出し
- 鉄骨アンカーボルト:アンカーボルト位置、レベル、ベースモルタル墨出し
- 鉄骨歪直し:鉄骨の垂直度、レベル等の確認
- 躯体工事中におけるその他の墨出し:カーテンウォール、プレキャスト版等のファスナー、その他の埋込み金物等の位置、レベル出し、デッキプレート取付けの相番
- 仕上基準墨出し:陸墨、柱芯、壁芯の立上げ、開口部芯、階段返り墨、外部角のタテ墨
- 仕上細部墨出し:内外、各芯よりの返り墨、間仕切り墨、二重天井用墨、石・タイル墨、天井・床割付墨、金物取付用墨等
- 設備関連墨出し:電灯器具取付用墨、各点検口墨、空調器具取付用墨等
※参考:東北技術検定研修協会「7.建設現場作業に関する共通事項」
1人で作業する方法
墨出しは、作業員が2人1組になって行うのが基本です。
基準線や水平の高さを出すためには、2つ以上の点をつなぐ必要があるためです。
しかし、近年ではレーザー墨出し器を用いることで、1人での作業も可能になっています。
レーザー墨出し器を使えば、自動で本体を水平に調整することができ、さらにそこから出るレーザー光によって高さを測ることが可能です。
また、墨つぼの糸を用いる場合には、短距離であれば自身の足で片側を固定しながら、また足が届かない場所であれば、釘や重差のある荷物で片側を固定しながら墨打ちを行います。
墨出しに必要な道具
次に、墨出しに必要な道具をご紹介します。
墨出しの作業には、複数の道具が必要になります。
専門道具としては、次のようなものが挙げられます。
- レーザー墨出し器:レーザー光でポイントを示し、基準点の高さを測定できる機器
- 墨つぼ:墨を含んだ綿が入ったつぼと伸びる糸から成る道具で、墨が染み込んだ糸を弾くことで壁や柱に線を引くことができる
- 墨差し:墨汁を含ませ線を引くヘラ状の道具
- チョークライン:墨つぼ同様、壁や柱に基準線を引く道具だが、墨ではなく粉チョークを使用するため線を消すことができる
- 糸巻き:作業に使う糸を巻きつけておく道具
- 下げ振り:糸に重りをぶら下げることで垂直を確認する道具
墨出しでは、他にも次のような一般的な道具も使われます。
- 図面
- 測量機
- 水平器
- 差し金
- レベル
- ほうき
- カッター
- スケーラー
- スケール(メジャー)
- ヘッドライト
- 建築用の筆記具 等
このように、墨出しには多くの種類の道具が用いられます。
中には専門性の高い道具もあるため、作業にあたっては、各道具の使い方について正しく理解しておくことが大切です。
墨出し作業時の注意点
最後に、墨出し作業において気をつけたい3つの注意点について解説していきます。
①わかりやすい線を引く
墨出しでは、わかりやすい線を引くことが大切です。
線がわかりにくい場合、施工の際に作業員が線をスムーズに読み取れなかったり、線の読みを誤ってミスが発生したりしてしまう可能性があるためです。
また、墨出しのやり直しが必要になると、その作業にも時間がかかってしまいます。
わかりやすい線を引くためには、道具をきれいに管理しておくとともに、正しい使い方をすることが大切です。
②ミスはすぐに修正を行う
墨出しでミスをしてしまった場合には、速やかに修正を行うようにしましょう。
例えば、線が二重になってしまった場合であれば、誤った線に×印を、正しい線に⚪︎印を記し、どちらが正しい線か誰が見てもわかるようにしておきます。
ミスをそのままにしておくと施工にもミスが連鎖していってしまうので、ミス部分の処理は迅速かつ正確に行うようにします。
③工事箇所以外を傷つけない
墨出しにあたっては、工事箇所以外を傷つけたり汚したりしないよう気をつけることも大切です。
工事箇所以外に傷や汚れがつく可能性がある場合には、シートやテープなどで事前に養生をしましょう。
墨出しは建設工事の基本!手順や注意点を知っておこう
墨出しとは、工事現場に図面の情報を写す作業のことです。
墨を用いて行われることが多いため、このように呼ばれています。
大まかには「基点の印打ち→親墨(芯墨や陸墨)→親墨を上階に移動→子墨出し」という手順で進められますが、具体的には行政が定める共通仕様書や特記仕様書が基準となっています。
専門用語や専門道具が用いられることも多いため、実際の作業では用語の意味や道具の使い方を押さえておくことが重要です。
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