こんにちは!ITの力で建設業界に貢献する「アークシステム」です。
住宅やマンション、アパートなどの建設工事では、基礎工事の前に「遣り方(やりかた)」という作業が行われます。
この作業は、建物のあらゆる基準を示すものであり、正確に建物を建設するためには欠かせません。
では、工事の遣り方は、具体的にどのような手順で進めていくものなのでしょうか。
今回は遣り方について、基本の手順と注意点を関連道具とともにご紹介します。
遣り方とは?
「遣り方(やりかた)」とは、敷地に対する建設物の位置や柱・壁の中心線および水平、高さなどといった「基準」を表すための、杭を用いた仮設工作物のことです。
図面上の「通り芯(柱・壁の中心を通る線、建物の縦軸と横軸の基準となる)」を、実際の敷地に移す作業ともいえるでしょう。
遣り方は、正確に建設物を建てるために非常に重要な作業で、必ず基礎工事の前に半日程度かけて行われます。
また、遣り方は「水盛り(みずもり)」「丁張り(ちょうはり)」と呼ばれることもありますが、一般的な建設現場では「遣り方」または「水盛り」、土木工事現場では「丁張り」と呼ぶことが多いです。
ちなみに、遣り方にかかるコストは直接仮設費に含まれます。
直接仮設費の詳細は「積算における直接仮設費とは?内訳や共通仮設費との違いを確認!」をご一読ください。
遣り方の目的
遣り方は、建物を正確に建設するために行われます。
遣り方を行わなければ、柱や壁の中心線がずれてしまい、地面に対し水平に建物を建てることはできません。
これは、安全面でもリスクとなります。
また、敷地境界線との位置関係がずれて、工事が進むとともに建築基準法違反となってしまうことも。
このようなことを避けるために、基礎工事前には正確な遣り方の実施が求められます。
遣り方に必要な道具
ここでは、遣り方を出すのに必要な道具とその役割を一覧でみていきましょう。
道具名 | 役割 |
杭 | 地面に打ち込むための杭。
基礎の一回り外に設置するもので、ひと隅には3本ずつL字型に打ち込む決まりとなっている。 |
レベル | 対象物の水平や高低差を測る測量機器。
その作業は「レベル出し」と呼ばれる。 レーザーの光を用いて計測するレーザーレベルや自動補正機能を有するオートレベルがよく用いられる。 |
トランシット | センサーによって物の角度を測る測量機器。
レーザートランシット・デジタルトランシット・光学トランシットの3種類が存在する。 |
大曲(おおがね) | 直角を出すための定規のこと。
ピタゴラスの定義を活用し、3:4:5の寸法比で直角を示すことができる。 「大矩(おおがね)」と記載されることもある。 |
ばか定規 | 必要な長さに切断した棒に印をつけて作る簡易定規(アルミ製のものも有り)。
同じ長さ・高さ(遣り方の場合は杭の基準となる高さ)を複数回効率的に測るために使われる。 |
下げ堀り | 糸の先端に重りをつけた道具のこと。
重りを垂らすことで、垂直を確認することができる。 使用時は風の影響を受けないよう注意が必要。 |
遣り方の手順と注意点
遣り方を出すには、複数の手順が必要です。
また作業を正確に行うには、いくつかの点に注意しなければなりません。
ここからは、その手順と注意点について解説していきます。
遣り方の6つの手順
遣り方は、次の6つの手順で進められます。
- 境界線の明確化
- 建物の位置確定
- 高さの基準確定
- 墨出し
- 矩出し
- 高さの確認
各手順について詳しくみていきましょう。
1.境界線の明確化
まずは、境界線の明確化から始めます。
この作業では、工事を実施する敷地とそうでない敷地を明確にし、杭によって印をつけていきます。
このとき、境界線となる杭は、建物の基礎工事を行う部分よりひと回り外側に設置するようにしましょう。
この境界線は、スムーズに工事を進めるために重要なものです。
もし境界線が敷地に面する道路や私有地にはみ出してしまうと、やり直しが必要になってしまいます。
トラブルなく工事を進めるためにも、境界線は図面をもとに距離と角度をしっかりと確認しながら、慎重に決めるようにしましょう。
2.建物の位置確定
敷地の境界線が定まったら、次に建築する建物の位置を決めていきます。
敷地の境界上に基点を設定し、それをもとに距離と角度から、建物の基本の位置を出していきましょう。
このとき、建物の位置は地縄(ロープやビニール紐でも可)を張ることで表します。
直角を確認しながら基準点を結んでいけば、建物の位置を正確に出すことが可能です。
地縄の設置にあたっては、異物を取り除き、敷地内をある程度整えておくと良いでしょう。
3.高さの基準確定
建設する建物の位置が決まったら、今度は高さの基準を確定させる作業に移ります。
現場の杭または固定物を目印(BM・ベンチマーク)に、「基準とする地面の高さ(GL・グランドライン)」を決定しましょう。
次に、「基準とする基礎工事の高さ」も決めていきます。
杭の間に貫(水貫)という薄い板を水平に設置し、高さを確定しましょう。
この時の高さは、基礎工事の仕上がりよりも約10cm高くしておくことが大切です。
この段階では、杭と貫はちょっとした振動で揺れてブレてしまうので、それを防ぐため、筋交貫と呼ばれる斜めの貫を設置し、全体を固定します。
4.墨出し
墨出しとは、施工図面の情報を現場に移す作業のこと。
墨を用いて基準線を現場に移すことで、正確な施工を実現します。
作業員は、現場の墨出しの情報に従って、工事を行うことになります。
墨出しでは、下階から上階へと、基準となる点から平行または垂直に柱や壁の中心点を墨打ちして、それぞれの点を結んでいきます。
墨を打つ場所によって、「逃げ墨」や「陸墨」など呼び方が変わるので、よく確認しておくようにしましょう。
その後、墨を打った対角線上に水糸を張って、それらが直角に交差することを確認します。
墨出しについては、こちらのコラムもご参考ください。
5.矩出し
建物よりもひと回り外側に設置した貫に張った、水糸の交点の対角を測って直角を出すことを、「矩出し(かねだし)」と呼びます。
墨出し後は、矩出しを実施しましょう。
もし直角にならない時には、先ほどご紹介したトランシットや大曲などを用いて調整し、正確な直角に設定します。
6.高さの確認
最後に、再度高さを確認します。
ここまでの作業によって張られた水糸から、建物の位置と高さの最終確認を行いましょう。
このとき、BM・GLの高さもよくチェックしておくようにしてください。
この確認作業は、図面をもとに測定機器を使って慎重に行いましょう。
目視で簡単に確認を済ませてしまうと、細かなズレに気づかず、後からやり直しが発生してしまう恐れがあります。
遣り方の注意点
ここまでご説明したとおり、遣り方は正確性が重要です。
正確に遣り方を出すためには、作業時に次の2点に注意するようにしましょう。
誤差を少なくする工夫を行う
遣り方を出す際には、誤差を少なくする工夫を行う必要があります。
例を挙げてみましょう。
- トランシットの設置回数をできるだけ少なくする
- 角度を確認する際には、長さの長いほうを基準に据える
- 水糸を弛ませない
トランシットは、設置回数が多いほど誤差が生まれやすいです。
また、角度の確認時に長さが短いほうを基準にすると、ズレが大きくなってしまう恐れがあります。
さらには、水糸をピンときつく張ることも大切。
水糸が弛んでしまうと、正確な基準を設置することはできません。
大きな揺れが生じないようにする
遣り方を出す現場では、大きな揺れが生じないようにすることも大切です。
揺れにより、せっかく設置した杭などがずれてしまう恐れがあるためです。
現場近くでは、工事の大型車両もなるべく走らせないようにしたほう方が良いでしょう。
遣り方とは工事のあらゆる「基準」を示す工作物
遣り方は、基礎工事の前に行う、工事にあたっての「基準」を示す仮設工作物です。
建設物の位置や柱・壁の中心線、水平、高さを表し、正確な工事を支える役割を担っています。
遣り方を出す際には、レベルやトランシットを用いながら、正確に杭を打ったり貫や水糸を設置したりしなければなりません。
作業を完了させるには複数の手順が必要ですが、各工程は丁寧に行い、作業の誤差を出さないよう努めましょう。
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